ねえ。ぼくはワルい子なの?

―そうだね、きみはワルい子だね。

ワルい子はどうすればいいの?

―ワルい子はね、死ななきゃいけないんだよ。

へえ、そうなんだ。

―だから、きみは死ななきゃいけないんだよ。

そうなのか。ぼくはワルい子だから、死ななくちゃいけなかったんだ。

―そうだよ、きみはとってもとってもワルい子だからね。

ぼくは、どのへんがワルい子なのかな?

―きみは、アリを殺しただろう?

ぼく、アリを殺したの?

―きみはそのおおきな足で、ちいさなアリを踏み殺したんだよ。きみは気付かなかっただけなんだ。

そうなんだ。ぼくはアリを殺しちゃったんだ。

―そう。きみはアリ殺しなんだ。アリ殺しは、死ななくちゃいけないんだ。

そうなんだ。ぼくはアリを殺しちゃったから、アリのために死ななくちゃいけないんだ。

―そうだよ。きみはいい子だね。

ぼくはいい子なの?

―きみはきちんと話を聞く子だからね。きみはとってもとってもいい子だよ。

いい子だったらどうなるの?

―いい子だったら、ごほうびがもらえるんだよ。

ごほうびってなに?

―きみの好きなこと、何でも叶えられるんだよ。

何でも叶えられるの?

―そう、何でも叶えられる。

じゃあ、どうしてぼくがいい子なのかおしえて。

―ほんとうにそれでいいんだね?

かえてもいい?

―それはいけないことだね。一度決めたことをやめるなんて、ソレはワルい子がすることだ。

ぼく、ワルい子なの?

―そうだね、君はワルい子で、いい子で、やっぱりワルい子だ。

ワルい子はどうなるの?

―ワルい子はね、死ななくちゃいけないんだよ。

どうして死ななくちゃいけないの?

―ワルい子が死ねば、いい子だけが残るだろう?そういうことさ。

なんだ、そういうことか。

―きみは話がわかる子だね。きみはとてもいい子だね。

ぼく、いい子なの?

―ああ。きみはワルい子で、いい子で、やっぱりワルい子で、でもいい子だ。

いい子はどうなるの?

―いい子はね、何でも好きなことを頼むことができるんだ。

好きなことだったら何でもいいの?

―言ってごらん。

死なないからだって、なれるかなあ?

―ソレはムリだね。ムリを言う子はワルい子だよ。

ぼく、ワルい子なの?

―そうだね。きみはワルい子だね。

そうか、ワルい子なのか。

―ああ。キミはワルい子で、いい子で、やっぱりワルい子で、でもいい子で、結局はワルい子なんだ。

ワルい子はどうすればいいの?

―ワルい子はね、死ななくちゃいけないんだ。

ぼく、死なないといけないの?

―そうだよ。

そうなんだ。

―そろそろ時間だよ。最後に何か言うことはある?

死にたくない。

―ありがとう。きみの最後の言葉はきちんと聞いておいたからね。

ありがとう。

―最後の言葉なんだから、もう喋っちゃだめだよ。

ごめん。

―きみは最後までワルい子だったね。でも仕方がないね。きみは頭もワルいんだから。

うん。

―じゃあね。

ぱーん。

―ソレはぼくがもってるこの銃が言う言葉だよ。

ごめ(パーン)


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