「……」

「……」



長い、沈黙が続く。

俺の頭は、まだ少し混乱している。



改めて状況を整理しよう。

俺はムクホークのムソウ。探検隊「はるのカネ」のメンバー。…うむ、これはいい。
そして目の前にいるのははるのカネのリーダーである、フシギダネのリイン…間違っていない。

問題なのは、こいつが俺の部屋で、しかも何故かセーラー服を着て正座していることだ。


「……」

「…おい」

沈黙は、俺の声で破れた。
ずっと顔を俯かせていたリインは、はっとしたように俺の顔を見上げる。
小動物みたいにプルプルと震えて、目には涙まで浮かべて…正直、俺はこの女が苦手だ。
なんで俺がこうまでしなくてはならないのか…泣かせないように、怖くなりすぎないように、ゆっくりと話しかける。

「なんで俺の部屋にいる」

「……なんと…なく…」

「なんとなく?」

リインの体がビクッと震える。

「……」

こいつが何の意味もなく、こんなくだらないことをするはずがない。俺もそのことについてよくわかっている…つもりだ。

「誰かに言われたのか」

「…」

「言え。…………怒らない、から」

「……ガブリエル…さんが…」

「ガブリエル?」

ガブリエル…っていうと、チーとか言うチビと一緒にいるあの化け物のことか。
…なるほど、あいつならやりそうなことだ。

「ムソウさんが…笑ってるところを見たいって……私も…少し興味があって…」

ビクビクと、視線をあっちへこっちへやりつつ答えるリイン。
しかし、すぐはっとしたかと思えば、俺に思い切り顔を近づけ、潤んだ瞳で俺にこう訴えかけてきた。

「ガブリエルさんも…怒らないであげて…悪気があったわけじゃないから…」

「そうか」

「……」

「とりあえず、出てけ」

「……ゴメン、なさい」

「いいから、さっさと自分の部屋に戻れ、…いいな」

……、ホントに、どっちがリーダーだか。
リインは俺にぺこぺこと頭を下げながら、部屋から出て行った。

「……」

部屋に、沈黙が戻る。
…いや、まだ、音が聴こえる。
壁に立て掛けてあった掃除用の箒を手に持ち、柄の側を天井に思い切り突き刺した。


ガツンッ!


「ぎゃあっ」


手ごたえあり。
箒を天井から引き抜くと、それと一緒に、何か大きなモノも一緒になって落ちてきた。
ふさふさとは言いがたいごわごわの尻尾に、いかにも頭悪そうな顔。…予想通りだ。
懐から携帯を取り出し、あるところに電話をかける。

「……保安官はいるか。指名手配中のブースターを捕まえた。…そうだ、覗き魔の。
 今そっちへ連れて行く。…いいや、どこにも属していない。俺一人だ。
 …ああ、ああ…わかった。用意して待っていろ」

話を終え、携帯の電源をプツッと切る。
そして、俺のすぐ側で気絶しているブースターに、声をかける。

「…相手が悪かったな、覗き魔さんよ」


目を回して倒れているブースターを見て、俺はニヤリと微笑んだ。


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