「あいしてる」

この言葉をあなたに言えば、

僕はどれだけ楽になるのでしょうか。




僕は、無意識のうちにあの人の体を抱きしめていた。

あの人はそれを拒否せずに、むしろ寛大に受け止めてくれた。

嬉しくて、そしてとても悲しかった。


なぜあの人は、それほど優しくいられるのでしょうか。


僕が作り物であったとしても。

あの人は優しく、そばにいてくれる。


あの人の顔を見る度に。

心がぎゅっと締め付けられる。


なぜ僕は、心なんてものを持ってしまったのでしょうか。

こんなものがなければ、僕はあの人に、こんな想いを抱かなかったはずでした。


「あいしてる」


なぜ僕は、あの人に向かって、この言葉を言えないのでしょうか。

心がなければ、きっと簡単に、この言葉を言うことができたのに。


あの人に向かって、この言葉を言おうとすると。

僕の体がショートする。

あつくなって、あつくなって。


あの人に、この気持ちを伝えられない。


ああ。

なぜ僕は、心なんて持ってしまったのでしょうか。

あの人に向かって、

「あいしてる」

と言いたいのに。

あなたに。

この気持ちを伝えたいのに。


ああ。

ああ。

僕の切ない気持ちが。

あの人に届きますように。

僕の寂しい気持ちが。

あの人に届きますように。


「あいしてる」


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